燃え殻おすすめ作品5選 なぜ中毒者が続出しているのか

読書

寝る前に何気なく手に取った『ボクたちはみんな大人になれなかった』という作品。

明日は朝早いから、軽く導入部分だけを読もう。

軽い気持ちで読み始めた。 はずだった…

「これって僕の物語だ」

そう思わざるを得ない。ページをめくる手が止まらない。
気が付いたら泣いていた。涙が止まらない。

あんな読書体験は初めてだった。

燃え殻さんの作品を読むと、まるで自分が物語の主人公になったような感覚に陥ります。

そしてどうやらそれは僕だけではないらしい….

なぜ多くの読者がそのような感覚に陥ってしまうのか。

今回は燃え殻さんの作品を、おすすめポイントとともに紹介。

デビュー作からエッセイまで魅力を詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧ください。

燃え殻とは

1973年生まれ。2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。

同作はNetflixで映画化、またエッセイ集『すべて忘れてしまうから』はDisney+でドラマ化され、ほかにも映像化、舞台化が相次ぐ。

著書に長篇小説『これはただの夏』、『湯布院奇行』、エッセイ集『それでも日々はつづくから』、『夢に迷って、タクシーを呼んだ』、『断片的回顧録』ほか。

参考:燃え殻 | 著者プロフィール | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

元々はテレビの美術製作会社で働く一般男性でしたが、職場への往復の電車で暇つぶしのために始めたTwitterが大バズり。

どことなくネガティブな雰囲気を漂わせながらも共感を呼ぶ文章が特徴。

「燃え殻」という名前の由来は元キリンジ、ミュージシャンの堀込泰行さんが馬の骨という名義で活動し始めてから出した1stシングルの「燃え殻」から取ったようです。

燃え殻作品の魅力とは

どこか人生を諦めているような暗い雰囲気だけど、なぜか読後に温かい気持ちになるのが、燃え殻作品の特徴。

世代や年齢にかかわらず懐かしい気持ちになり、読後しばらく物思いに耽ってしまいます。

具体的な解決策などは一切書かれていないのに、なぜか悩みなどがスーッと消えていく。

これはなぜなのでしょうか?

その鍵は「かっこ悪さのさらけ出し」にあると思います。

人間って落ち込んでる時や悩んでる時に、具体的な解決策よりも「そのままでいいんだよ」などの肯定的な言葉を欲してたりするんですよね。

燃え殻さんの文章は劣等感や情けなさ、みっともなさなどの、本来他人には隠しておきたいような感情がありのままに綴られていきます。

そんな飾らない文章だからこそ、卑屈な気持ちにならずに自然と受け入れられて1文1文が心に沁み渡っていくんだと思います。

人生に悩みや葛藤を抱えている方、忙しない日常の中でも心がほっと癒されるような読書体験をしたい方におすすめです。

燃え殻のおすすめ作品5選

  • ボクたちはみんな大人になれなかった
  • これはただの夏
  • すべて忘れてしまうから
  • ブルーハワイ
  • 愛と忘却の日々

ボクたちはみんな大人になれなかった

燃え殻のデビュー作にして映画化もされた大ヒット作。

1990年代後半を舞台にしたノスタルジックな雰囲気が溢れる作品。

大人になってしまった人にぶっ刺さる。

あらすじ

17年前、渋谷。大好きだった彼女は別れ際、「今度CD持ってくるね」と言った。

それがボクたちの最終回になった。

17年後、満員電車。43歳になったボクは、人波に飲まれて、知らないうちにフェイスブックの「友達申請」を送信してしまっていた。

あの最愛の彼女に。

とっくに大人になった今になって、夢もない、金もない、手に職もない、二度と戻りたくなかったはずの《あの頃》がなぜか最強に輝いて見える。

ただ、「自分よりも好きになってしまった人」がいただけに……。

感想

この作品では劇的な展開は起きません。

東京の街でくすぶる普通の男が恋をして仕事をして、たくさんの出会いと別れを繰り返す。

そして彼女と自然消滅で別れる。ただそれだけ。

だからこそぶっ刺さる。誰しもが忘れられない恋をしたことがあると思いますが、それは案外劇的な展開があったわけでもなく、気づいたら自然に終わっていったものだったりしますよね。

そんなどこにでも転がっているような恋愛が描かれていくからこそ、この作品が多くの読者の支持を得ているんだと思います。

これはただの夏

燃え殻の2作目の小説。

「夏」と「別れ」がテーマのひと夏の思い出を描いた作品です。

読後、センチメンタルな気持ちになってひと夏を過ごして離れ離れになってしまった「あの人」を思い出してしまいます。

あらすじ

「普通がいちばん」「普通の大人になりなさい」と親に言われながら、周囲にあわせることや子供が苦手で、なんとなく独身のまま、テレビ制作会社の仕事に忙殺されながら生きてしまった「ボク」。

取引先の披露宴で知り合った女性と語り合い、唯一、まともにつきあえるテレビ局のディレクターにステージ4の末期癌が見つかる。

そして、マンションのエントランスで別冊マーガレットを独り読んでいた小学生の明菜と会話を交わすうちに、ひょんなことから面倒をみることに。

ボクだけでなく、ボクのまわりの人たちもまた何者かになれず、何者かになることを強要されていたのかもしれない……。

感想

安定した仕事について結婚して、幸せな家庭を築く。世間一般的にいう「普通の幸せ」を掴んでいる人でも、同世代の起業家やフリーランスなどのキラキラした世界に憧れを抱いてしまう。

逆にキラキラした世界を生きているように見える人も、その人なりの苦悩や葛藤があって、本当にこの道を選んでよかったのか何度も後悔をする。

隣の芝生は青いとはよくいったもので、どちらが正解という答えがないからこそ自分に無いものを求めてしまうのが人間の性だと思います。

そんな誰しもが一度は抱いたことのある「何者かになりたい」というテーマで描かれた作品だからこそ多くの人に刺さります。

すべて忘れてしまうから

阿部寛さん主演でドラマ化もされた燃え殻の初エッセイ。

何気ない日常に起きる心を動かされた些細な出来事。何日後かには忘れてしまうようなそんな記憶を思い出させてくれます。

あらすじ

ひとりで聴いた深夜ラジオから聞こえてきた彼女の声。祖母と二人でこっそり見た女子プロレス中継。突然生活に入り込んできた「テレワーク」

良いことも悪いことも、僕たちは忘れてしまう。だからこそ書き残しておきたかった、日常を通り過ぎて行った愛しい思い出たち。

感想

毎日同じような生活を繰り返していると段々新鮮さがなくなっていって、まるで時間割によって定められた毎日を送っているような感覚に陥ることがあります。

小学生の頃の楽しかった出来事は鮮明に思い出せるのに、昨日の夕飯は忘れてしまう。

そんな繰り返しの毎日にも必ず新しい出来事は起きているわけで、このエッセイを読むと歳を重ねていくうちに失われていった感性を取り戻すことができます。

人生には大きな事件や、一瞬でこれまでの人生をガラッと変えるような出来事はそうそう起きません。

だけど、何気ない日常にも小さな幸せはたくさん転がっていて、それに気づけるようになることが大切だと思います。

退屈な毎日を過ごしていたり、辛いことにばかり目を向けてしまう大人になった僕たちにこそ刺さる作品。そして必ず心の支えになってくれます。

ブルーハワイ

他人に共有するほどではない。

だけど心の中にそっとしまっておきたくなるような優しい言葉たちが詰まっている作品。

中毒者続出の大人気エッセイです。

あらすじ

ふとしたきっかけで蘇る記憶の数々。

淀んでいた会議の空気を変えた女の子の大ネタ、僕が放った2点の答え(1000点満点中)、「串カツ田中」が愛おしくなった縛りのキツい店、J-WAVEに寄せられたお悩み相談、母の決まり文句、祖母の遺言、柴犬ジョンの教え…

ギスギスした日常の息苦しさを解きほぐす一服の清涼剤。

感想

日常の何気ないことがきっかけとなってふと思い出す過去の記憶たち。

「今までどこに隠れてたの??」

と言いたくなるようなたまに思い出すけど、またすぐに忘れてしまうような人生の機微を大切にしまっておきたくなるような作品です。

自分の経験じゃないのに「分かる!!」と思わず共感してしまうようなエピソードばかり。

書店で見つけ、軽い気持ちで立ち読みを始めた人が思わず購入し、その日のうちに全て読んでしまうことが容易に予想される小説のようなテンポ感の良さ。

そして読後、不思議と温かい気持ちになって明日もがんばろうと思える作品です。

愛と忘却の日々

あらすじ

「ロマンチックなことが少なすぎるんだよ」 

中毒者、ますます増殖中。六本木の路上で「おっぱい、足りてる?」とキャッチに声をかけられ、「足りてないけど、余裕がないんです」とテンパっていた夜。

小学生の頃、ひどいイジメに遭い、「死にたい」と母に泣きつき、包丁を畳みに突き刺して言われたひと言。

「ベスト・エッセイ」(日本文藝家協会編)選出作を収録、読者渇望の大人気エッセイ集。

感想

どうってことないけど、後で振り返ると自分にとっては大切な刹那が語られていきます。

毎日刻まれていて、頭の中のどこかに小さく折りたたまれていく何気ない日常たち。

そんな普段は忘れている、なんてこともない記憶のカケラほど、後になって尊く感じる。

そういったほろ苦い思い出や、楽しかった記憶の断片が愛おしくなっていきます。

「みんな頑張りすぎてない?ちょっと肩の力抜いてこうぜ」
的な感じで、この作品の燃え殻さんの言葉たちがちっぽけだけど偉大な勇気を与えてくれました。

まとめ

Instagramで募集した「燃え殻さんの作品読んだことありますか?」という質問。

本好きのフォロワーさんに向けたアンケートにも関わらず、読んだことがあったのは2割程。

今回は燃え殻さんの魅力をみなさんにも味わっていただきたいと思い、執筆しました。

小説からでも良し、エッセイからでも良し。

この記事をきっかけに「燃え殻中毒」の方が増えましたらこの上なく嬉しいです。

Audibleでは今回紹介した「これはただの夏」を聴くことができます。

30日間無料なのでぜひ最初のきっかけとして活用してみてください。

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